ちょっと、元気が出た話

10数年、お世話になっている美容室がある。

そのよしみで、チラシや今年出版したばかりの本なんかも、置かせてもらっている。

予約するとき、新しいチラシが出来たから、と設置をお願いをしたら、

快く引き受けてくれた。

当日、髪を切りながら、

マスターが

「まさに、有言実行ですね。」って言った。

「え?」

「だって、全部やってきているじゃないですか。」

「そうかな?」

自分的には、まだ半分も実行できていない。

最近はそういう自分に、焦りと苛立ちを覚えていた。

「出来ていないのは、NYにちょい住みぐらいでしょ。」

あっと思った。

ずっとわたしは、ニューヨークに住んでみたいと言っていた。

ニューヨーク、LOVEと言い続けていた。

もちろんそれを忘れたわけではない。

でも、いつの間にか、ニューヨークという言葉は、

あまり口にしなくなっていた。

わたしは変わった。

やりたいことも、やっていることもあの頃とは違う。

遠い、かの国よりも、今目の前にあるものごとに、

目も心も奪われている。

でも、心にパッと火がつくのが分かった。

「そう言えば、そういうことも言っていたね。それができればいいけど。」

「思い続けていれば、必ず叶いますよ!」

その自信ありげな言い方に、少し楽しくなる。

だから、わたしも調子に乗って言ってみる。

「うん、いつかその時が来たら、ニューヨークがわたしを呼ぶんだ。」

彼は大きく頷いて、自分も南国の島にでも呼ばれるのを待っていると言って笑った。

「まだ、呼ばれないってことは、何かが足りないのかな。」

そう言いかけると

「違いますって、まだここ(地元)が自分を必要としているってことですよ。

まだ、ここに必要としている人たちがたくさんいるってことですよ。」

「なるほど!」

モノは言いよう、考え方しだい。

言葉ひとつで思考がガラリと変わる。

久しぶりに声を立てて笑った。

そっか、わたしはまだここ(地元)ですることがたくさんあるのだ。

これから始める新しい講座やサービスもある。

まだまだ勉強中のこともある。

マスターに言わせれば、それらは全て下積み、仕込みのときだと言う。

いつか、かの国や街に呼ばれるための準備期間なのだ。

そう思えば焦るのも、苛立つのもバカバカしくなってくる。

「そういうことか。じゃ、わたしもいつかニューヨークに呼ばれるまで、

頑張ってみようかな。」

なんて言う、ちょっとした元気が出るお話です。


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